日本とアメリカ ─ 健康に対する価値観の違い #1/2
ヘルスリテラシー』のスコアが低いという報告があります。ヘルスリテラシーとは「健康や医療に関する正しい情報を入手し、理解して活用する能力」のことで、国際的に注目されている概念です。 日本はアメリカやアジア諸国など世界各国に比べて『
ヘルスリテラシーが低いと病気や怪我の適切な予防方法の知識が少ないため、それらを未然に防ぐことが難しかったり、かえって症状を悪化させてしまい結果として治療のためにかかる医療費が高くなるといった経済的な問題にも直結します。
日本のヘルスリテラシーが低い理由は色々ありますが、私がアメリカで強く感じたのは健康に対する『価値観』の違いでした。「運動は健康に良い」という理解は共通ですが、その判断に至る「ものの見方」はアメリカと日本では大きく異なります。
違いの1つは医療保険制度です。アメリカには先進国で唯一、日本のように全国民をカバーする公的医療保険制度がありません。低所得者や高齢者・障害者には国や州の運営する公的医療保険がありますが、国民の約7割が企業の用意した民間の医療保険に入り、医療をいわゆる「市場原理=原則として価格は病院が決定」に任せています。当然医療保険に加入していない国民もいます。
例えば、日本で急性虫垂炎で入院・手術した場合の費用は約31万円(入院日数7日間として)ですが、アメリカでは保険のランクにもよりますが1万ドル以上(1日入院)の費用が請求されます。日本は国民皆保険制度なのでどこに行っても患者負担は3割で約10万円程度です。
アメリカの中でもニューヨーク・マンハッタンの医療費はかなり高額で一般の初診料は150ドルから300ドル、専門医を受診すると200ドルから500ドル、入院した場合は室料だけで1日約2千ドルから3千ドル程度の請求を受けます。これは1日の入院室料だけでニューヨークの中間給与所得者の1か月分の月給またはそれ以上に相当する金額です。
さらにアメリカなど一部の国では、加入する保険や登録医師の紹介が必要になるなど「行きたい病院に行きたいタイミングで自由に診てもらうこと(フリーアクセス)」ができません。日本のように国民皆保険がありフリーアクセスである国は非常に珍しいんです。
こういった背景からアメリカには日本のように「気軽」に病院に行く感覚がありません。と言うより行きたくても行けないのです。
アメリカは「フィットネス大国でトレーニング好き」、「ピラティスの本場でセレブはみんなやっている」というイメージが強いですが、現実は高い医療費を支払う代わりに日頃から運動をすることで病気にならないよう健康を維持する考えになっているというのが実情です。そして、お金がない人は「病院に行かないという選択」が待っています。
風邪をひいたら簡単に病院に行ける日本と、生きるために運動が不可欠なアメリカ。
健康を「病気でない状態」と捉える日本と、健康を「お金」と捉えるアメリカ。
日本でも保険制度の持続問題や医師の働き方改革など、今までのような「いつでも病院に行ける状況」がいつまで続くかわからなくなってきています。
病気の予防には習慣化した適度な運動が最も良い生活習慣の一つです。