5人の偉大な継承者たち
今もなお、世界のピラティス界を牽引する偉大な継承者たち
ここで紹介する5人は、ピラティスの創始者 Joseph Pilates の精神を真摯に受け継ぎ、それぞれのアプローチで今日のピラティス界を築き上げてきた存在です。クラシカル(古典的)か、コンテンポラリー(現代的)かというスタイルの違いはあれど、いずれも「からだとこころへの深い理解」に根ざしたピラティスを伝え続けています。
それぞれの指導者とその団体・流派の特徴は以下の通りです。
ロン・フレッチャー(Ron Fletcher)
・フレッチャーピラティス(Fletcher Pilates)創設者
・マーサ・グラハム・ダンスカンパニーのダンサーであり、Joseph Pilatesに直接指導を受けた第一世代教師(エルダー)のひとり
・1960年代にロマーナ・クリザノウスカと同様、クララ・ピラティス(ジョセフの妻)から長期にわたって指導を受けた数少ない人物のひとり
・1968年、ビバリーヒルズに「The Ron Fletcher Studio for Body Contrology」設立
・独自の呼吸法「パーカッシブ ブリージング」や「フレッチャー タオルワーク」「フロアワーク」など「Fletcher fusion」スタイルを確立。
・2011年に心不全により90歳で逝去
Fletcher Pilatesは、Joseph Pilatesの直弟子であるRon Fletcherによって発展させられたピラティス メソッドです。彼自身の芸術的背景と医療的視点が融合した、最も独創的かつ表現的なピラティスの流派として知られています。Fletcher Pilatesは、ピラティスに芸術性と詩的な動作を融合させた稀有な流派です。「身体の動きが、その人の人生を語る」というRonの哲学は、現在も多くの指導者に影響を与え続けています。
マリ・ウィンザー(Mari Winsor)
・ウィンザーピラティス(Winsor Pilates)創設者
・ロマーナ・クリザノウスカの認定を受けたピラティス指導者。
・2003年に最初のDVDを販売し、最終的には30枚のDVDと5000万本のプログラムを販売
・「 Dynamic Sequencing Workout 」と呼ばれる低強度でも効果的なエクササイズスタイルを確立
・2020年にALS(筋萎縮性側索硬化症)により70歳で逝去
ピラティスを一般家庭にまで広めた立役者。ビデオやメディアを通じ、ピラティスを日常のセルフケアの一部として提案した先駆者であり、現代におけるピラティスの普及に大きく貢献しました。
ボブ・リーケンズ(Bob Liekens)
・Drue Friedmann、Kerry F. Kaneらと共にパワーピラティス(Power Pilates)創設に深く関与
・ダンサーとして活動し、長年にわたりロマーナ・クリザノウスカの指導を受ける。
・Joseph Pilatesの「マット」「リフォーマー」「キャデラック」「ワンダチェア」などの順番・原則・スタイルを原型のまま保持し広めることに尽力。
・Power Pilatesの教育部門のディレクターとして、安全性を重視したクラシカル ピラティスの普及に努める。
・2018年に心臓発作により63歳で逝去
Power Pilatesは、Joseph Pilatesのクラシカル メソッドの精神と技術を忠実に受け継ぎつつ、「教える技術」を体系化した流派です。美学と構造を尊重しながら、ピラティスを伝統芸のように磨き上げ、世界へ広げている存在といえます。
Bob Liekensは、2000年9月にPower Pilatesのディレクターに就任し、同団体のティーチャートレーニング認定プログラムの構築に不可欠な役割を果たしました。
モイラ・メリスー(Moira Merrithew)
・ストットピラティス(STOTT Pilates)共同創設者
・プロのダンサーとして活動中に怪我を負い、ロマーナ・クリザノウスカのもとでピラティスを学ぶ
・1988年に夫であるLindsay G. Merrithewと共にSTOTT Pilatesを設立
・「現代の生体力学」や「リハビリ理論」を積極的に取り入れている点が特徴
・5つの基本原則(Five Basic Principles)がある
STOTT Pilatesは、ピラティスを「科学と安全性に基づく総合的なボディワーク」として再構築した現代的かつ機能的なメソッドです。理論の一貫性、教育の整備、安全性への配慮から医療現場や高齢者、スポーツパフォーマンス向上など、幅広いニーズに対応できる点が最大の魅力です。
ラエル・イサコウィッツ(Rael Isacowitz)
・BASI Pilates(Body Arts and Science International)創設者
・プロダンサーとして活動し、ピラティスのエルダーであるロマーナ・クリザノウスカ、キャシー・グラント、ロン・フレッチャー、イヴ・ジェントリー、ロリータ・サン・ミゲルから直接学ぶ
・ピラティスの需要が高まる中で、体系的な指導者養成プログラムの必要性を感じ、1989年にBASI Pilatesを設立
・ヨガ、バレエ、体操、禅に造詣が深くピラティスでは精密な動作と内省を重視
・2006年に出版した「PILATES」は教育用テキストとして人気を博し、2014年には2nd Editionが販売され米国ではピラティス指導者のバイブルとして活用されている
・現代的にブラッシュアップされた「10の原則」がある
BASI Pilatesは、現代ピラティスの代表的な教育機関の一つで、クラシカル・メソッドの原理を基盤としつつ、解剖学と運動科学を統合したコンテンポラリー・ピラティスの流派です。世界40カ国以上に拠点を持ち、国際的な教育水準の高さで知られています。米国では「世界で最も美しいピラティス」と呼ばれプロフェッショナル志向のインストラクターに根強い人気があります。特殊人群(高齢者、妊婦、リハビリ)の対応方法、精神面への理解などにも注力しており、まさにモダン・ピラティスと言えます。
Raelは、運動科学や解剖学はもちろん感性・感覚・経験の積み重ねも重要視し、その取り組みはピラティスを単なるエクササイズから科学的かつ芸術的な身体教育へと昇華させています。