ナウシカのフィルモグラフィー
映画という芸術は、感性を揺さぶり、想像力を静かに呼び覚まします。その力は、ピラティスにおいてもまた、かけがえのない素質です。
身体に深く耳を澄まし、内なる動きを感じること。それは、一本の映画を観るように、想像力はからだを目覚めさせ、感性は動きに詩を与えます。
クリエイティブな視野を形成する助けとなった映画をリストにまとめてみました。
ここに挙げる作品が、せわしない日々の中で物事を考える静かなひとときをもたらすよう願っています。
想像力をかき立てる映画の数々

おすすめの映画
Christopher Nolan / 2014 / アメリカ
重力がすべてを引き寄せる世界で、ただひとつ抗えるものがあるとすれば、それは「愛」かもしれません。
荒廃した地球に別れを告げ、父は宇宙の果てへと旅立ちます。
タイムパラドックス、次元のねじれ、ブラックホールを超えた先で彼が見たのは、科学では測れない家族への想いでした。
理性と情動、どちらが私たちを未来へ導くのか。宇宙の闇の奥から、その問いを投げかけます。
“Love is the one thing that transcends time and space.”
—— 愛は、時間と空間を超えて届く唯一の力。
ホイテ・ヴァン・ホイテマによる広大な宇宙の映像と、ハンス・ジマーのオルガンが織りなす音楽が、理性と情動の間を静かに満たします。
Interstellar / インターステラー
Good Will Hunting / グッド・ウィル・ハンティング(旅立ち)
Gus Van Sant / 1997 / アメリカ
どれだけ遠くまで数式を導けても、自分の心を知るには、別の勇気が必要です。
ウィルは、孤独と怒りの中に天才を隠して生きていました。そんな彼に寄り添ったのは、人生の傷を知るセラピスト。
誰かと向き合うこと。自分を赦すこと。それは、最も難しく、最も美しい「旅立ち」です。
才能を無駄にしたまま街に居続ける彼に、親友チャッキーはある日こう語ります。それは、自分の人生を生きてほしいと願う、深く優しい友情の言葉でした。
“You know what the best part of my day is? It’s for about ten seconds, from when I pull up to the curb and when I get to your door, ‘cause I think maybe I’ll get there and you won’t be there.”
—— おれの一日の中で、いちばんワクワクする瞬間があるんだ。それは、お前の家の前に着いて、ドアをノックするまでの数秒間。
『もしかしたら、今日こそお前がいないかもしれない』って思える時間さ。
エリオット・スミスの切なく温かな楽曲が、抑制された映像とともに、登場人物たちの未熟さと真実をそっと浮かび上がらせます。
Gattaca / ガタカ
Andrew Niccol / 1997 / アメリカ
遺伝子によってすべてが決まる社会で、ひとりの青年は、夢だけを武器に星を目指します。
彼の名はヴィンセント。出生時に「不適格」とされながら、完全なDNAを持つ他人になりすますことで、宇宙飛行士への道を切り開いてゆきます。
「GATTACA」というタイトルは、DNAを構成する塩基(Guanine, Adenine, Thymine, Cytosine)の記号を並べ替えたもの。
それは「遺伝情報に支配される世界」の象徴でありながら、そこに抗う意志の美しさも孕んでいます。
“I never saved anything for the swim back.”
—— 引き返すための力なんて、残してこなかった。
青と琥珀のコントラストが印象的でスタイリッシュな映像美。マイケル・ナイマンによる静謐なピアノが、運命に抗う意志を研ぎ澄ませます。
Dead Poets Society / いまを生きる
Peter Weir / 1989 / アメリカ
規律と伝統に縛られた名門寄宿学校に、ひとりの教師が風を吹き込みます。
彼は教えます。詩は生きるためにあり、人生は自分自身のものだと。
若者たちは、内なる声に耳を澄ませ、「自分の言葉」で人生を語りはじめます。
それはまるで、まだ見ぬ自身の可能性に、そっと手を伸ばすように。
“Carpe diem. Seize the day, boys. Make your lives extraordinary.”
—— カルペ・ディエム(今を生きろ)。人生を、特別なものにするんだ。
ニューハンプシャーの森と霧の中に漂う自然光。柔らかなカメラが、若者たちの内面の揺らぎと詩の言葉を美しく映し出します。
Nuovo Cinema Paradiso / ニュー・シネマ・パラダイス
Giuseppe Tornatore / 1988 / イタリア
小さな村の映画館を舞台に、少年と映写技師のあいだに育まれる深い絆。
映画という魔法に魅せられ、やがてひとりの人生がかたちづくられていきます。
成長と別れ、喪失と再会。
そして、時間の彼方から届く一本のフィルムが、過去を抱きしめ、未来をそっと照らします。
“Whatever you end up doing, love it. The way you loved the projection booth when you were a little squirt.”
—— どんな道を選んでも、それを愛せ。あの頃のおまえが映写室を愛したように。
エンニオ・モリコーネによる主題曲が、すべての記憶と結びつき、銀幕の光とともにノスタルジアの海へと導きます。
